開催中の特別展

魅惑のヴェネツィアガラス展 -受け継がれる伝統技法と美-

会期 2021年 10月 26日(火) ~ 2022年 1月 24日(月)

※最終日の2022年1月24日(月)は16:00閉館となります。(最終入場は15:30まで)

 ヴェネツィアでは13世紀頃からすでにガラス産業が盛んであり、ヴェネツィア政府はガラス技術の保護と育成のため、ガラス職人全てをヴェネツィア本島の目と鼻の先にあるムラノ島へ強制的に移住させました。ガラス職人達は生活の保障を得る代わりに、島外不出の掟など厳しい規約のもとで日々活発な生産活動を繰り広げました。
 16・17世紀頃になると様々な新技法が開発され、そこにガラス職人たちの優れた想像力が加わり、素晴らしいガラス器が次々と作り出されました。そして、ガラスの「素材の質の良さ」や「多彩な技法」、「ガラス職人の優れた技術」によって、ヴェネツィアガラスの名声は世界中に知れ渡るようになります。
 本展では、13世紀頃から脈々と受け継がれてきた、エリーテ・ムラノ工房の伝統技法を使った美しく華やかなグラス作品や、ヴェネツィアガラス界の巨匠アルフレード・バルビーニをはじめ、ピノ・シニョレット、リチオ・ザネッティ、エルコーレ・モレッティ工房などの伝統技法を個性豊かなデザインに昇華させたモダン作品などをご紹介致します。また、本邦初公開となるレースガラス制作の第一人者であるジュリアーノ・バラリンが制作した新収蔵作品5点をご披露致します。
 熟練の職人達によって作り出された美しいヴェネツィアガラスの世界を、どうぞお楽しみください。

レースガラスのプレート
(ジュリアーノ・バラリン作)

レースガラス技法のひとつであるレティチェッロ(網目線状模様)が使われており、光の当たり具合で作品の色合いが変わって見えます。放射線状の網目の中に均等に気泡が入っており、まるで花火を思わせるようなモダンなデザインとなっています。
“レースガラス”とは、透明なガラスの中に色ガラスでレースのような繊細な線状模様を作り出す技法です。レース編みが盛んだったヴェネツィアでは、美しく繊細なレース模様をガラスで表現するために技術が磨かれ、16世紀に最盛期を迎えました。
ヴェネツィアのレースガラス技法は「門外不出の秘法」として、優れた腕を持つムラノ島のガラス職人に代々受け継がれてきました。その繊細さや美しさはヨーロッパ中の貴族を虜にし、豪華な宮殿を彩る装飾品として大流行したと言われています。

エナメル彩飾り脚グラス
(エリーテ・ムラノ工房)

金とエナメル彩とによって、トラや鳥など自然界の動物たちが力強く描かれています。装飾的な脚部には、こちらも金箔が施されたヘビのモチーフによってデザインされています。
エナメル彩技法とは、ガラスの表面にガラスの粉末と松ヤニを混ぜた顔料を用いて絵付けする技法のことです。顔料を何度も重ねて塗った後、約600度の温度で顔料をガラスの表面に焼き付け、定着させることで剥離や変色が防がれます。そのため、半永久的に色彩が保たれることから「永遠の絵画」と呼ばれています。

花器
(アルフレード・バルビーニ作

『ソンメルソ』と呼ばれる技法を用いて作られた花器です。バルビーニは、ガラスの色の特徴とその重なり方、あらゆる角度からの反射光を緻密に計算し、ソンメルソの作品を制作していました。
ソンメルソとはイタリア語で「沈んだ」や「浸した」という意味があります。その名の通り、ソンメルソ技法は透明のガラスの内側に色彩や模様が浸っているように見える技法です。厚みのあるタイプのガラスに良く使われ、まるで水に沈んでいくかのような幻想的で美しい色のグラデーションを楽しむことができます。

ミッレ・フィオーリの皿
(エルコーレ・モレッティ工房

黒と白、淡い水色や黄緑色のムリーネのコントラストが大変美しい、モザイクガラス技法による作品です。
モザイクガラス技法とは古代メソポタミアのガラス技法の一つで、ムリーネと呼ばれるスライスされたガラス片をモザイク状に密に並べ、熱で溶着させて器を作る技法です。
ムリーネの作り方は日本の金太郎飴と同じ原理で、様々な色のガラスを重ね合わせて模様を作り、それを伸ばしてガラス棒にしたものを薄く輪切りにします。ヴェネツィアでは花のような模様のムリーネを並べて作る「ミッレ・フィオーリ」が有名です。

ファミリア
(リチオ・ザネッティ作

“被せガラス”の技法が用いられた作品です。柔らかく幾層にも重なった繊細な白のグラデーションから、包み込むような家族の温かみが感じられます。
被せガラスは、成形の過程で異なる色のガラスを複数層重ねて制作されます。カットや彫刻を施し、素地と色文様のコントラストや、色の重なり合いを楽しむことができます。ガラスを何層も重ねるのは至難の技であり、熟練の職人の技術を要します。